できなかったことができる喜びを自信に

北海道釧路北陽高等学校
工藤よしの先生
Points!
今年1年生を担当されているとのことですが、どのような活動をされているのですか?
はい。1年生には「パフォーマンステスト」としてニュースキャスターになりきる課題を用意しています。ニュースキャスターというと「ニュースを読むだけ」というイメージがありますが、実際にはコメントをする場面もありますよね。そうしたイメージで取り組んでもらっています。
ニュースの原稿は教科書にある要約文で、それを暗唱し自分の感想やコメントを加えるという活動です。題材はレッスンの中からニュースのネタになりそうなものを選びました。例えば、福井県のサバ缶を高校生が宇宙食として開発した話や、アバターロボットを開発した吉藤さんの話です。生徒たちは自分で要約を作るのではなく、既に教科書にある要約文をベースに読み上げ、それに自分のコメントを加えたニュース動画を提出します。
音読メーターは、要約文を暗唱する際の練習に使用しています。
要約文の暗唱は、得意な生徒だけではありませんが、むしろ苦手だからこそ、できるようになったときに大きな自信につながります。英語に限らず「できなかったことができるようになる」という経験は、生徒にとって大切です。
私は北海道で毎年夏に行われるワークショップで、もう10年ほど講師を務めています。その場でも「生徒に自信をもたせる」という観点から音読メーターを紹介しました。音読メーターは、生徒に自信を与える大きな力になっていると感じています。
北陽高校の生徒さんはどんな様子ですか?
正直に言うと、英語に苦手意識をもって入学してくる生徒がほとんどです。中学校時代にも英語の文章を十分に読んだ経験がなく、そのため音読をしても、まるでお経を読むように抑揚がなく、英語らしさが感じられないのです。
ただ、1年次からニュースキャスターになりきるというようなに取り組ませるのは、最終的に3年生になったときにプレゼンテーションを堂々と取り組めるようになるためです。だからこそ「英語らしく読むのは当たり前」という感覚を、早い段階から身に付けさせたいと考えています。
具体的にはどのように取り組ませているのですか?
暗唱の練習をする際に、「英語らしく読む」ことをより意識させるため、例えば「今日は50%を超えよう」「次は60%目標ね」といった形で数値目標を設け、達成した生徒には加点をする仕組みを導入しました。こうすることで「ただ読む」から「英語らしく読む」へと意識が変わってきました。
音読メーターを使用する前は、100語程度のものでも生徒たちは「絶対覚えられない」「無理」と言うので、「やればできる、練習が足りないだけだよ」と声を掛けながら、穴あき・虫食い形式の教材を進めていました。
音読メーターを導入してから、生徒にどのような変化がありましたか?
大きな変化がありました。まず、すぐにフィードバックが返ってくるので、生徒たちは「悔しい!」と思って繰り返し読むようになるんです。授業中に「今日は5分だけ」と区切っても、「もう少しやりたい」と言う生徒が出てきます。最初は「無理」と言っていた子が、目標の50%を超えると誇らしげに報告してきますし、60%を目指して挑戦する姿勢も見られるようになりました。
中には「アルファベットを見るだけで吐き気がする」と言っていたほど英語嫌いの生徒もいましたが、そうした子も顔つきや取り組む姿勢が変わってきています。去年までは見られなかった「英語らしく読む」という意識が、音読メーターを導入してから本当に定着してきたと感じます。
また、ALTの先生から「日本語と英語では母音の違いがある」といったアドバイスをもらう機会もありました。そこで「先生も言っていたよね」と声を掛けると、生徒たちは一生懸命耳を傾け、真似して読もうとするようになりました。以前とは全く違う前向きな姿です。
授業以外でも音読メーターを活用されていますか?
子どもたちは部活動も熱心で、日々の課題も多く、本当に忙しいです。だからこれ以上無理に宿題を増やすのはかわいそうだと思っています。
それでも、音読メーターを使うと自分から「家でもやった」という声が出てきます。頑張った分が評価され、昇級・昇段のようにレベルアップが見える化される仕組みもあるので、大きな達成感につながっています。正答率だけではなく「取り組み量がレベルとして積み上がる」という点が、生徒のモチベーションになっています。
今後、パフォーマンステスト以外ではどのように活用していきたいですか?
今回は「英語らしい発音」をテーマにパフォーマンステストをしましたが、この先はプレゼンテーションやディベート、ライティングなどさまざまな場面があります。音読メーターには、自分が書いた文章を取り込み、音声に変えてくれたり、音読の練習ができたりする機能もあるため、配信された英文をただ読むのではなく、自分の英語が「どう読んだらより英語らしく伝わるのか」を意識できるのが音読メーターの良さで、大きな強みだと思います。
3年次の段階では「課題をこなす」に留まらず、「もっと良くするために、こうしたツールを使って練習するのは当たり前」という姿勢で取り組んでほしいと思っています。
本日は貴重なお話をありがとうございました。先生のご経験や実践を通して、生徒の皆さんが「英語らしく読む」ことに自信を深めている様子がよく伝わってきました。今後も音読メーターがその一助となれるよう、私たちも努めてまいります。
